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 一般家庭で夏の日中に最も電気を消費するのはエアコンだ。その割合は推計で53%に達する。エアコンの消費電力は3割減らすことができれば、それだけで15%の節電を達成できたことになる。

【節電DIY:エアコンの設定温度を上げると本当に節電できるのか】

 この6〜7月筆者は毎日、テレビのEPGで「節電」を検索して録画、視聴した。多い日は数本の放送があるほど節電に関する話題にはことかかなかった。その中でエアコンの節電に関しては「設定温度を2度上げると10%の節電」だという。これは資源エネルギー庁が公表している数値で、1番よく流布している指標だ。エアコンメーカーのダイキンは1度上げると10%節電できると主張しているし、1度で数%という数値も目にすることがある。今回はこのあたりの数値の検証と実際のエアコンの節電について考えてみよう。

●室温33度、消費電力は最大で1257ワット、最少で160ワット

 ニュース番組などで「設定温度を2度上げると10%の節電、残り5%で15%達成」と主張するケースがあるが、普通に解釈すればエアコン単体で10%の節電=53%の10%で5.3%、残りまだ10%ほどを他の方法で節電する必要がありそうだ。とは言え最も比率の高いエアコンの節電は、日本全体の夏の課題と言えよう。

 最初の検証は6月末の猛暑日に行った。外気温36度、室温33度の日にエアコンの温度設定を変更しながら消費電力の変化をチェックした。消費電力の最大は1257ワット、最少は160ワット。室温と設定温度の差によって消費電力は大きく変化するのは予想通りだが、その動作は予想外に複雑で、設定温度を2度上げたら10%の節電というような単純な結果を導き出すことは不可能だと思った。

 しかし、この検証である程度エアコン動作を理解したので、2度目の検証は梅雨明け後、外気温32度、室温31度の日にエアコンの設定温度を29度と27度で比較してみた。計測した項目は消費電力、外気温、エアコン吹き出し口の温度、室温の4項目。室温はレイアウトの都合上エアコンの真下、床から高さ1メートルくらいの温度を測定している。

 29度に設定した下のグラフを見てみよう。紫色の線がベランダで測定した外気温。測定中32度くらいで推移している。緑色の線が室温で測定開始時は31度、青色の線がエアコンの設定温度。29度なので室温を2度下げることになる。黄色の線はエアコンの吹き出し口の温度、赤色の線は消費電力で右側のスケールがワットとなっている。

 エアコンをオンにすると170ワットくらいで5分ほど様子見をしている感じだ。吹き出し口の温度を見ると2分くらいは送風で3分ほどして下がり始める。消費電力はステップを踏みながら上昇していく。200ワット、220ワット、240ワット、300ワットと2〜3分一定の出力で様子を見て徐々に強くなっていくイメージだ。ピークとなる548ワットに達したのは開始から34分後、この時の室温は30度、吹き出し口の温度は17.2度まで下がった。ちなみにエアコン本体の温度表示のランプは出力がピークに達する3分ほど前に29度を示していた。

 ここから消費電力は徐々に減り、吹き出し口の温度もゆるやかに上昇する。室温はその後も徐々に下がり、開始から47分で29度に達し28.5度くらいで安定した。消費電力はピークから25分かけてボトムとなる145ワットまで下がり開始から1時間ほどで160ワットあたりで安定状態となった。

 ここでいったん測定を終了。ドライの消費電力、エアコン再起動時の消費電力を測定して電源を切った。続いて20分ほど窓を開け、室温を元の状態に戻して次の測定を開始した。

●設定温度を2度下げると……

 今度はエアコンの設定温度は27度。外気温32度、室温31度とほぼ同じ条件での測定となった。グラフを見てみよう。縦軸のスケールは先ほどと同じだが、横軸は1時間5分が2時間となっている。

グラフの記事:エアコンの設定温度を上げると本当に節電できるのか
(http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1108/11/news012.html)

 室温と設定温度の差が4度になるとエアコンも頑張り方が違うようだ。開始から消費電力はガンガン増え2分後に930ワットに達する。5分ほど一定の状態があり開始7分で1130ワットとなった。吹き出し口の温度は1分を過ぎた頃から下がり初め5分後で17度、先ほどの34分と比べると頑張りの差は明らかだ。吹き出し口の温度はその後も下がり11〜12度で推移した。

 室温は開始19分で29度、43分で27度に達しその後26度付近で安定状態となった。消費電力は1時間ほど1000ワット以上で推移し660ワットくらいに急降下、30分ほど一定の状態の後、今度はゆっくり降下して開始から1時間45分ほどして300ワットくらいで安定状態となった。11〜12度だった吹き出し口の温度も消費電力が300ワットになると16度くらいに上昇した。

 累積の消費電力量は29度設定で0.35キロワットアワー(1時間5分)、27度設定で1.59キロワットアワー(2時間)となった。1時間に換算して比較すると29度で323ワットアワー、27度で795ワットアワーと約60%の削減となった。安定状態は29度で160ワット、27度で310ワットなので比較すると約50%の削減。安定状態がずっと続くという仮定で6時間使用した場合は、29度で1.15キロワットアワー、27度で2.83キロワットアワーとなり約60%の削減という計算となる。

●冷房とドライの電力差

 冷房とドライの電力差も測定したので紹介しよう。29度設定し160ワットの安定状態に入ったところでドライに切り替えると、消費電力は206ワットに上昇した。この条件の場合はドライよりも冷房の方が消費電力は少なくなっている。

 冷房中の送風は弱と強で10ワット程度の差でエアコン全体の消費電力からするとそれほど大きな差はない。音のうるささを無視すれば弱よりは強にした方が温度ムラも減るし、風により涼しく感じる場合もある。自動に設定すれば最初は強で動作し、安定状態になると弱に切り替わる。

●気温によっては設定温度を上げても節電にならないことも

 エアコンはこまめに切るより動かし続けた方が省エネと言われるので、これも少しだけ検証してみた。29度設定→ドライの後5分ほど停止し再度29度設定でオンにしてみた。この時の室温は28.8度で設定温度を維持している状態だった。この条件で開始2分で170ワット、その後微増して十数分で230ワットくらい安定状態となった。このデータではオン、オフを繰り返すより動かし続けた方が消費電力は少なくなりそうだが、オフにする時間の長さや設定温度によって変化するので実際には使用条件で異なってくるだろう。

 今回測定を行った部屋はリビング・ダイニングで約12畳+カウンターキッチンの3.4畳が同じ空間だ。筆者宅のエアコンはマンション購入時に設置した96年製。使用頻度が年に数回なので買い替えせずに使い続けている。部屋の大きさやエアコン新しさで異なる結果になるはずだが、ある程度は参考になると思う。

 ここまでのデータを見ると設定温度を2度上げると消費電力量はおよそ半減、ピークの電力も29度で548ワット、27度で1139ワットと約半分となっている。数値だけ見ると節電は楽勝とも思えるが、実際にはそうでもない。

 今回の設定温度は27度と29度。世の中で言われている26度と28度にしなかったのは、6月末の猛暑日の予備実験の結果からだ。猛暑の際、安定状態に入るまでにかなりの時間がかかることが分かったのである。恐らく28度の設定で1時間半、26度にすると2時間半から3時間かかったと思われる。というわけで、測定条件を同じにするには外気温が同じ時間帯に行う必要があったため27度と29度で実験を行った。

 設定温度29度の消費電力を見るとピークで548ワット、安定状態で160ワットとそこそこ省エネとなっているが、あくまで外気温が32度、元々の室温が31度という条件での話しだ。もし外気温が34度、室温が33度になれば27度設定と同じ動作をすると思われるので消費電力は一気に倍増する。さらに昨年のように外気温が37度まで上昇すれば、フルパワーの状態を何時間も維持することになりそうだ。1000ワット以上で連続運転が続けば消費電力は数倍に達することになる。

 予備実験を行った日は外気温35.6度、室温33度だった。エアコンの設定温度を26度にすると消費電力は1257ワットに達したので、この値がこのエアコンのMAXだと思われる。仮に温度設定を24度にしてもこれ以上消費電力は増えないだろう。逆に外気温が2度上がると設定温度を26度から28度にしてもフルパワーで稼働する可能性が高い。

 機種によるが、多くのエアコンは外気温を計って動作するわけではなく、計った室温と設定温度によって消費電力が決まるはずだ。外気温と室温の関係は、日照条件や建物の構造によって異なってくる。車の室温が外気温より高くなるように、ガラス張りのオフィスビルはかなり室温が高くなる可能性が高い。そうなると酷暑の日には設定温度を26度から28度にしても消費電力が1%も下がらない事態も起こり得るだろう。

 これまでの検証と考察でエアコンの温度設定を2度上げると10%、1度上げると10%など表記のバラツキがある理由が分かってきたと思う。室温と設定温度の差が小さければ温度設定による節電効果は高く、差が大きければ節電効果は低くなる。実情を反映すると気温が低ければ温度設定による節電効果は高く、気温が高くなると節電効果は低くなる。2度で10%の節電というのは、一つの目安程度に考えた方がいいだろう。

●設定温度を徐々に下げると愛が冷める!?

 さてエアコンの動作を理解した上で節電(節約)とピークシフトについて考えてみたい。節電を重視する方はスタート時点の設定温度をできるだけ高くすることだ。室温と設定温度の差が小さければエアコンはゆっくりと動作を開始する。30分から1時間で設定温度に達したら、さらに設定温度を1度下げることを繰り返し、最終的な設定温度まで徐々に下げれば消費電力は最小となる。最終的な設定温度は高ければ高いほど節電だ。この方法なら最大消費電力も低く抑えることができる。

 ピークシフトを重視する場合は、エアコンをオンにする瞬間が、電力需要のピーク時間の前なのか、最中なのか、後なのかで異なってくる。昼間の需要が多い時間帯ならピークを作らないように設定温度をできるだけ高くし数時間かけて徐々に下げることが望ましい。

 早朝でまだ電力にゆとりのある時間なら、思い切って設定温度を下げ一気に室温を下げ20〜30分したところで設定温度を高めに設定し低電力で安定動作させた方がピーク時の電力消費を抑えられる。2つの実験のデータを合成し設定温度を27度から29度に変更した場合の推定してみた。開始18分で室温が29度まで下がったところで設定温度を29度に変更すれば35分くらいには安定状態に入る可能性はある。

 企業の場合、お昼は会社全体の電力消費が下がるので、エアコンは切らずにそのまま稼働を続けた方が、13時以降にエアコンを再稼働するよりも13時台の消費電力を下げられる可能性もある。

 ピークを過ぎた時間に帰宅した場合は比較的自由に設定すればいいだろう。もし彼女を連れて帰宅した場合は見栄を張って設定温度を下げ急速に部屋を冷やし、30分くらいしたところで最終的な設定温度に上げれば快適さと節電を両立できる。徐々に設定温度を下げたりすると、部屋はなかなか冷えないのに、愛は一気に冷める危険性もあるから要注意だ。

●節電に効果あり! 室外機を“水冷”

 冒頭に書いたように、筆者は毎日節電番組をチェックしている。9割以上は「エアコンの設定温度を2度……」「最新の家電品は○○%省エネ……」とありきたりの情報で役に立たない。その中で、最も興味を持ったのはテレビ東京「トコトンハテナ」の節電に関する放送だ。

 その番組の中でエアコンの室外機の回りを綺麗にし、日よけを設置、水で室外機を冷やしたところ20%の節電という結果が出た。冷蔵庫でも水冷の効果は絶大だったので、エアコンの室外機の水冷も検証だけしてみた。

 3回目の実験は猛暑日。検証中の外気温は平均34.4度と高めだが、室温は2回目の実験とほぼ同じ31度くらいだった。今回は設定温度を27度にして急速に室温を下げ、途中から29度に変更する検証と、フルパワーに近い状態と低消費電力で安定している状態で室外機に水を掛けその効果を検証した。

 設定温度を27度にしたので前回と同様スタートから消費電力は急増。今回も20分で室温は29度まで下がった。この時の消費電力は1160ワット前後、じょうろで室外機の背面、片側面の放熱部分に水を掛けると消費電力は急速に減り50秒後に834ワットと約30%ほど減少した。やはり水冷の効果は絶大だ。室外機は大きなファンで送風しているので水の乾きも早く2〜3分で元の状態に戻ってしまった。この時エアコン吹き出し口の温度も12.8度から11度に短時間だが下がっている。

 水冷の実験を終え設定温度を29度に上げると、すでに室温が29度より下がっていたので送風状態となり消費電力は25ワットまで激減、2分ほどで160ワット前後で推移し始めた。この状態で再び室外機を水冷すると消費電力は97ワットまで減少、瞬間的に40%以上の節電が確認できた。消費電力が少なめで発熱が少ないせいか5分ほどして元の状態に戻った。連続してもう一度水冷を行うとほぼ同じ結果となった。

 温度設定を途中で変更する検証は予測通り。20分で室温を下げピークを前半にシフトすることができた。水冷は瞬間的には30〜40%の節電が確認できた。企業向けには定期的に室外機に散水する装置が売られているが、家庭では園芸用の散水用品などを応用して、水を掛け続ける仕組みを用意すれば大きな節電ができそうだ。

 筆者はエアコンを使用しないので、この実験後はコンセントを抜いたままだが、一般的にはエアコンの消費電力は企業でも家庭でも比率が高い。温度設定、本体のフィルターの掃除、室外機回りの邪魔なものと退ける、室外機の日よけなども効果がありそうなので、まずは小さなことの積み重ねから始めたい。さらに頑張るなら室外機を水で冷やせば冷蔵庫と同様大きな節電が期待できる。

 もちろん、エアコンの節電は熱中症により生命に影響することもある。当然のことだが、節電よりも健康を重視しよう。扇風機などを併用したり、外気を利用して涼しく過ごす方法を考えることも重要だ。そのあたりはまた後日紹介する。次回はテレビの節電に関して考えてみたい。

【奥川浩彦,Business Media 誠】


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